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Interview
Lapidem株式会社 代表取締役社長 近藤由希子

with Lapidem 007:近藤由希子(Lapidem株式会社 代表取締役)

今回のIN DEEP LAPIDEMは、ラピデムの近藤由希子社長が満を持して登場です。

近藤社長がこれまで駆け抜けた道のりや、ラピデムとお客様に対する思いはもちろんのこと、2023年2月にリリースされる新ライン「RITUAL(リチュアル)」のコンセプトや制作秘話についても存分に語ってもらいました。さらに多くの方にラピデムを愛していただくきっかけにとなれば幸いです。

心と体が芯からリラックスできる場所を作りたい

――まずは、ラピデムが生まれるまでのエピソードについてうかがえますか?

ラピデムを創業する以前に経営していたウェディングドレスのお店に、エステを併設したのがきっかけでした。最初はトリートメントに既存の製品を使っていたんですが、これがなかなか高価で。お客様はただでさえ結婚式の準備でお金がかかっているんだから、いいサービスをなるべく安く提供してあげたいとの思いで、自分で原料を探し回って商品を開発したりしていました。そして、現在スパを営業しているテナントをお借りしたことをきっかけに、現在の「ラピデム トウキョウ スパ」をオープンさせました。

――新しい挑戦に「スパ」を選ばれたのはなぜだったのでしょう?

私はもともとアパレル畑の人間で、美容業界のことが何もわからなかったので、勉強のために多くのエステやスパに足を運んでいました。そんな折に利用したスパに、すごく感動したんです。素晴らしい景色が見える場所でお風呂やサウナに入って、香りのいいお茶を飲んで、完全にリラックスした後にトリートメントを受けて……。「この心身が満たされる感覚ってどこから生まれるんだろう」「この幸福感や感動させられる体験をどうやったらお客様に提供できるんだろう」と考えたとき、私がやりたいことってこういうことだなとすぐに腑に落ちました。そして、心と体が芯からリラックスさせられるような特別な場所を作ろうとの思いで「ラピデム トウキョウ スパ」をオープンさせました。

――「ラピデム トウキョウ スパ」を立ち上げる際に大切にしたことは?

主に3つあります。1つ目は「物語」です。「体験」と表現したほうがわかりやすいでしょうか。お客様がスパを訪れてからお帰りになるまでの間に、お客様の感情を揺さぶれるような体験をどれだけ与えられるかを考え、コンセプトやプログラム設計には徹底的にこだわりました。

2つ目は「ディテール」です。お客様にスパで体験できる心地よさ、気持ちよさ、癒やしといったポジティブな感覚を最大限に味わっていただくために、気づかれるか気づかれないかというような細部にこだわろうとしました。例えば、枕から漂う香り、部屋の音楽、調度品など。冬場はスリッパやタオルなど肌に触れるものをほんのり温かくするなど、お客様の五感に訴えかけ、研ぎ澄ますような工夫を凝らしています。

最後は「セラピスト」です。どれだけ素晴らしいコンセプト設計をしても、物語を描いても、ディテールにこだわっても、お客様と接し、肌に触れるセラピストがいなければ何も始まりませんから。セラピスト、物語、ディテール。この3つがすべて合わさった先に、感動があると考えています。

――寺島雪江さんを始め、何人かのセラピストさんと接する機会がありますが、みなさん、とてもポジティブかつ優しいオーラをまとっているなという印象を受けました。

ありがとうございます。彼女たちはそれぞれに異なる特徴や良さを持っていますが、全員に共通しているのは、”手から伝わるものを信じている”ことだと思いますし、彼女たちのプロフェッショナル精神には本当に頭が下がります。また、スパの技術を持たない私のアイディアを具現化してくれる寺島がラピデムも加わってくれたことは、本当に大きかったです。

思わぬ病で気づいた、人の美しさの根源にあるもの

――ラピデムは「真の美しさは健康の先にある」というコンセプトのもと、心身にはたらきかけるサービスを提供しています。このコンセプトはどのような経緯で生まれたのですか。

5年ほど前に、「バセドウ病」という病気になりました。バセドウ病は甲状腺という器官の病気で、お医者さんいわく体内がフルマラソンをしているような状態になるんですが、疲れていても覚醒状態が続いて元気は元気なんです。だから、それまで大きな病気をしたことがなかった私は、自分が病気だなんて思いもせずに仕事に打ち込んでいたんですが、そのうち知人から「なんだか変だよ」とすすめられて病院に行ったら、よく普通に生活ができていたねと驚かれるような状態になっていました。

病気になって気づいたことが2つあります。1つは自分の心身に目を向けて体調の変化に気づくことの大切さ。振り返れば、私の体は病院にかかる前から様々なSOSを出していたはずなのに、それに目を向けずに過ごしているうちにひどい状態になってしまっていた。忙しい現代人は仕事でもプライベートでも心身に負荷をかけながら生きています。その負荷が大きな病気として現れる前に、ラピデムとしてできることはないだろうかと思うようになりました。

もう1つは、心や体が健康でないと外面も美しくなれないということ。病気が判明してからは体調や症状もつらかったですが、何よりショックだったのが自分の外見の変化でした。肌はボロボロ、髪はパサパサ。痩せこけて目だけがギラギラしていて、鏡に映る自分を「怖い」とすら感じたときに、心身の健康の大切さを強く実感させられました。

――そのような気づきを、どのようにコンセプトに落とし込んだのでしょうか。

病気をきっかけに、代替医療や予防医学、東洋医学について勉強し始めたのですが、特に惹かれたのが、心身が健やかな状態で幸福に生きる「ウェルビーイング」という考え方と、心身をトータルで見て不調を取り除いていくという東洋医学のアプローチでした。

ラピデムは病気を治療することはできないけれど、病気になる前や、不定愁訴(ふていしゅうそ)のタイミングでメンテナンスを行い、防げるものがたくさんあるはず……。そう考え、「真の美しさは健康の先にある」というコンセプトを設定しました。そして、東洋医学をベースに、日本に古来より伝わる知恵や健康法のアプローチを、スキンケア用品やスパのプログラムに取り入れるようになりました。

自分自身を知るためのサポートを行いたい

――不調が「病気」として現れる前にケアするという考え方は、今の時代にもとても合っているように感じます。

最近「ウェルネス」という考え方が注目されています。ごく簡単にいうと「いかに自分らしく、充実した人生を送るか」ということなんですが、これを達成するための第一歩は、自分自身をよく知り、ありのままの自分を受け入れることとされています。

自分らしく、充実した幸福な人生を送るために、心身の健康はとても大切な要素の1つです。ラピデムでは、お客様の心身の不調や痛みをトリートメントや商品で和らげることを第一としつつも、我々とお客様とで手を携え、バラバラになった心と身体を一つにしていくことも大切だと考えています。そのような思いで開発したのが、「ファイブエレメント」というバス&マッサージオイルでした。

――東洋医学の「陰陽五行説」に基づいて、体質別にブレンドされた5種類のオイルですね。”自分のことを知るきっかけを生むスキンケア”というコンセプトで開発されたとうかがっています。

ラピデムを通じて、お客様がご自身のことを知るきっかけを作り、健やかに過ごすヒントをお伝えできたらという思いから、最近は、弊社のオウンドメディア「LAPIHORI」やSNSで健康や美容に関する情報発信もスタートさせました。

自分の体調やコンディション、自分を取り巻く環境を知ろうとすると、足りないものを補う、もしくは余分なものを取り除くという意識が生まれ、日々の過ごし方が変わってくると思います。

――と言いますと?

例えば、東洋医学では、柑橘系の香りを欲している時や、肩こりや目の疲れがある時は、肝臓に負担がかかっている可能性があるとされています。また、肝臓は毒素をためやすい器官です。こうした知識を持った上で、自身の小さな変化に気づくことができるようになると、「肝臓が弱っているかもしれないから、酸っぱいものを食べてデトックスしよう」とか、「脂っこいものは避けて、食物繊維や酵素が多い緑黄色野菜をたくさんとろう」とか、「しっかりめに運動して、汗を流そう」といった対応をとることができるわけですね。

Lapidem Five Elements Bath&Massage Oil

睡眠と若返りにアプローチする新製品

――今後の展開についても教えて下さい。

2月に新しいスキンケアライン「RITUAL(リチュアル)」を発売します。

リチュアルとは日本語で「儀式」……つまり、非日常の特別な行為を意味する言葉です。

忙しいとついつい自分のことがおざなりになってしまいがちです。どんな素晴らしい化粧品も、フェイシャルトリートメントも、心身が平穏でなければ効果を発揮できません。そこで、日常的に行っているスキンケアの時間を、あえて儀式としてとらえ、自らを労ったり、清めたり、心身に平穏をもたらす”特別な時間”に変えることで、質のいい睡眠を促し、それによって若々しく健康な肌、心、身体をもたらせたら……という思いで名付けました。

今回発売するのは、ウォーターレスのミスト美容液、美容液、洗い流さないタイプのマスクの3種類です。椿や昆布、小豆といった日本古来の自然素材を、精進料理の規律に沿って成分・処方し、有効成分を高配合しました。また、上質な睡眠をもたらすとされる、ラベンダーやネロリ、ジャスミンなどの香りも取り入れています。

――どのような経緯で開発されたのですか?

このシリーズの開発がスタートしたのは、ちょうど新型コロナウィルスによるロックダウンが始まった時期でした。世界中の人々がいつ終わるかわからないパンデミックに不安を抱えている状況を受け、「私たちにできることは何か」とチームで話し合った結果、お客様に平穏をもたらし、心身と肌を健やかに導くためのサービス・商品を届けたいという思いから開発が始まりました。

先程お話ししたように、私は病気の影響で、どんなに疲れていても眠れないという苦しさを味わいました。その経験を踏まえて、人が生きる上で欠かせない「睡眠」と、その上質な睡眠によってもたらされる、心と肌と身体の回復をテーマにした商品を開発することになったんです。

――睡眠にアプローチするスキンケア商品というのは、目新しいです。

上質な睡眠を得るためは、自律神経を整えることが大切だと言われています。自律神経は”活動モード”の交感神経と、”リラックスモード”の副交感神経があるのですが、副交感神経の働きが弱くなると、不眠や気分の落ち込みといった心身の不調が起こりやすくなります。私たちのスパにいらっしゃるお客様の中にも、2つの神経の切り替えがうまくできず、悩まれている方が多くいらっしゃる印象です。

RITUALは、スキンケアの儀式によって活動的な神経のスイッチをオフにする習慣を養い、香りによって浅い呼吸を深め、目には見えない手から伝わる力を信じて感情にアプローチするウェルネススキンケアです。

香りを司る「嗅覚」は、人間が持つ5つの感覚の中で最も古くから備わったもので、嗅覚から得た情報は、他の4つの感覚とは異なる神経経路をたどり、いち早く脳に届き、心と体を動かすそうです。ストレスを軽減し、副交感神経を優位にすることに、香りはとても重要な役割を担っています。

また、スパ業界には「素晴らしい化粧品の効果を最大限に引き出せるかどうかは、セラピストの手によって決まる」という言葉があるのですが、手から伝わる力を信じて使うことで、その効力は大きな違いを生みます。皮膚は「第三の脳」とも呼ばれる器官。心地よさを感じたり、不安を解消したり、孤独から解放されたりと私たちに様々な感情をもたらすという、神秘的な力を秘めています。

睡眠と若返りをコンセプトに開発されたコレクション「Ritual(リチュアル)」
睡眠と若返りをコンセプトに開発されたコレクション「Ritual(リチュアル)」

つらい夜を過ごすすべての人々に、小さな儀式の時間を

――今後の夢、展望はありますか?

日本は海外のウェルネス業界から「長寿国」「健康大国」として大きな注目を集めていますし、禅などに代表される精神性に興味を持たれている方もたくさんいます。私たちは以前より、スパで提供するプログラムやトリートメント、サービスのアプローチの考え方に通じるものがあると、茶道や禅の思想から様々な要素を取り入れていますが、知れば知るほど日本文化の素晴らしさを実感します。だからこそ、日本発のスパブランドとして、私たちが生まれ育ったこの国の文化や自然環境の素晴らしさを、より多くの人に再発見してもらいたいと思っています。

残念ながら、日本ではまだスパの認知度は高くありませんが、心と体、肌の健康をサポートするよりよいウェルネスジャーニーをお客様に提供し続け、世界に向けてラピデムを広げていきたい。そんな思いを持っています。

――最後に、このインタビューを読まれる方に向けて、メッセージをお願いいたします。

パンデミック、政情不安、不況……。混沌としたこの時代、自分自身に責任を持ち、常に前向きに、自分や周囲の人々にとって正しい決断を下すことが求められます。そして、正しい決断を下すためには、心身の健康が欠かせません。

私たちラピデムでは、”真の美しさは健康の先にあるもの”という哲学に基づき、スパ体験や製品を通してお客様に平穏なひと時をもたらし、より充実したウェルネスライフをサポートすることを使命としています。

コロナ禍や社会情勢の影響を受け、ネガティブな思いにとらわれがちな時代ですし、どんな人だって泣きたい夜や後悔したい夜、癒されたい夜があると思うんです。そんなとき、ラピデムを小さな儀式として取り入れ心身に平穏と安らぎをもたらし、健やかに、そして美しく過ごしていただけたら幸いです。

Lapidem株式会社 代表取締役社長 近藤由希子

プロフィール

近藤由希子(こんどう・ゆきこ)

1983年生まれ

ラピデム株式会社取締役社長

昨年より、飲食事業を立ち上げ、地方の農家や生産者を訪れ、素材にこだわったSNSで大人気のカフェ、Café JAIMEとJAIME茶屋をオープン。