with Lapidem 003:寺島雪江(インストラクター/セラピスト)
「日本のスパ文化を作り上げ、広めることがラピデムの使命」
一昨年、ラピデムに頼もしい仲間がジョインしました。
数々のスパ施設で素晴らしい業績を挙げ、美容業界誌で「ゴッドハンド」として取り上げられたこともある寺島雪江さんは、確かな経験と全身からほとばしるような「セラピスト愛」で、ラピデムのさまざまな領域に新しい力を授けてくれる存在です。
そんな寺島さんがスパ業界に足を踏み込むことになった理由や、セラピストとしての思い、そしてラピデムで成し遂げたいこと……。腹を割って、じっくりとうかがいました。ストレスフルな現代女性に向けた、セラピストならではの「ストレス解消法」も必見です。
日本発のスパブランドに衝撃を受ける
――基本的なことで申し訳ないんですが、スパとはどういうものなのでしょうか? なんとなく温泉に付随しているものというイメージがありますが……。
スパという言葉は元々「水を介した癒やし」というような意味があって、温泉やタラソテラピーなどを含むリハビリ・医療施設や代替療法がそれにあたるものでした。ただ最近では水の有無は関係なしに「身体と精神の健康状態を維持するためのトリートメントを施す場所」というふうにとらえられることが増えています。
――「健康」に重きを置いている点で、エステとは異なるものなのですね。
はい、「ラピデム トウキョウ スパ」を含め、いわゆるエステ的な美容系のメニューが用意されているスパサロンもありますが、もっと精神的、身体的な健康…最近「ウェルネス」という言葉で扱われる領域にまで踏み込んだ存在がスパで、それを担うのがセラピストと考えていただければと思います。
――寺島さんがセラピストになったきっかけは何だったんですか?
一般企業を経て、22歳のときにエステティシャンに転職したんですが、ケミカルな化粧品や機械を使った施術や、何度通っていただいてもよくならない肌のトラブルに触れているうちに「もっと自然に近いもので、根本から改善に働きかけられるものがあるのでは?」と思うようになったんです。そんなときにアロマと出会い、独学で勉強するうちにすぐに「これだ!」と直感が働き、エステサロンを退職してアロマセラピストになったのが1998年の23歳の時でした。
その後、アロマを含め様々なアプローチができるスパセラピストを志すようになり、勤務していた愛知県の会社が新たにスパ部門を立ち上げたことをきっかけに、2005年のときに念願のスパセラピストとしてのキャリアがスタートしました。
――その後、ラピデムに入社されるまでにはどのようなキャリアを積まれたんですか?
この会社には5年間在籍し、「デイスパ」と呼ばれる日帰り利用のスパに関しては、立ち上げから売り上げを軌道に乗せるところまでやれることはやり尽くしたと感じたので、今度は滞在型の「ホテルスパ」の経験を積むために、フランスのスパブランドの社員として、京都のラグジュアリーホテルや直営サロンで経験を積みました。
その後、より日本人の肌に合った製品を使いたいとの思いで、同じアジア圏のタイのスパブランド「パンピューリ」の日本法人に転職し、ホテル様への導入サポートやスタッフの研修、プロモーションや取材対応など幅広い業務を担当することに。その途中でラピデムの存在を知り、「日本発のスパブランドがあるなんて!」と衝撃を受け、2020年に一員に加わっていたという感じです(笑)。
――セラピストとして24年のキャリアを持っていた寺島さんが驚くくらいですから、「ラピデム」のような国内スパブランドは相当珍しいものなんですね。
そうなんです。当時、スパが入っている日本のラグジュアリーホテルはみな海外資本でしたし、そこで使用されるスキンケア製品もみな海外製。特にヨーロッパの製品が多く、中には繊細な日本人の肌質にフィットしないものも多かったので、セラピストとしてはもどかしい思いをしていました。
ラピデムの製品は余分なものを極力使わず、東洋医学や日本古来の要素を取り入れて作られたもので、初めて使った時には肌なじみのよさに驚きました。そして「これが私の求めていたものだ!」と直感しました。
セラピストの仕事を天職と感じた、お客様からの言葉
――ラピデムではどのような業務に携わられているんですか?
主に国内のお取引様に、導入サポートやトリートメントプログラムの提案などをさせていただきつつ、新商品の開発や直営サロン「ラピデム トウキョウ スパ」のサポートなど、さまざまな業務に携わっています。ちなみに週1回は無理を言って、セラピストとしてもお客様を担当しています。
――なぜセラピストとしての業務にこだわるんですか?
セラピストとしての感覚を忘れたくないというのもありますし、現場で得た知見はインストラクターとしても役立ちますし……何より、セラピストの仕事が本当に好きなんです。なんていうんでしょう…私にとってはトリートメントをすることは呼吸のようなもので、ごく当たり前に近くにないと死んでしまうような(笑)。もちろんお客様のために行っていることなんですけど、自分のためにやっているところもあるんです。
――まさに、天職ですね。
この仕事をずっとしたいと思うようになったきっかけがあります。もう20年も前に、アロマセラピストとしてホテルに勤務していたとき、あるお客様に「人の手がこんなにあたたかいと感じたのは初めてです」と言っていただいたんです。そのお客様はご家族の介護などで、心身にいろんなものを抱えている方だったんですが、そういった方に活力に与えられるセラピストの仕事って、なんて意義深い仕事なんだろうと思いましたし、この一言で、この仕事を一生続けていきたいと強く思わされました。 実は当時、私自身も心身の健康を崩していて、体重は30キロ台まで落ち込み、手足も冷え切っていました。この一件を通して、セラピストとしてお客様を支えるためには私自身が強くいなければいけないと感じ、以後は身体的にも精神的にも健康でいられるよう、日常生活から気を配るようになりました。ヨガやエクササイズで体の状態を知ったり、喜怒哀楽の感情にも敏感でいられるよう心がけました。サロンのセラピストたちの健康も常に気を配るようにしています。
「香り」を利用して心を整える
――ラピデムにジョインされる前は、お休みがとれないほど忙しい時期もあったとうかがっています。そういったときはどのように心身の健康を整えられていたんですか?
当時は若かったこともあって、やりたいことを形にできているという充足感で疲れが吹き飛んでいたようなところもあったんですが、今は、気持ちの面ですごく「香り」に助けられてます。
――と言いますと?
玄関、寝室、リビングなど、自分の家の至るところにお気に入りの香りを漂わせておくと、仕事から帰ってきたときに「帰ってきた―」ってすごくリラックスできるんです。逆に朝は、シャワーを浴びたあと、バスルームに置いてあるマッサージオイルのコレクションから「これだ!」というものをチョイスし、香水代わりに全身にまとわせることで気分を活性化させています。
――元アロマセラピストならではのルーティーンですね。
香りって本当に奥が深くて、感情や体調によって「いいな」と感じる香りが変わるんですよ。嗅覚から脳の記憶をたどって必要なものを瞬時に判断するらしくて、直感力やインスピレーションが高まる効果もあります。香りをかいで、それを選びとる時間ってちょっと贅沢な時間だと思うので、忙しい方や疲れている方にはぜひ試してもらいたいですね。
ちなみにラピデムのバス&マッサージオイルは、心と身体を解き放つ「リリース」、リラックス効果のある「カーム」、インスピレーションを高める「バランス」など、用途や精神状態に応じた5種類の香りがあります。
ラピデムで見据える大きなミッション
――ラピデムではどのようなミッションを持たれていますか?
壮大ではありますが、2つあります。1つは日本のスパ文化をつくっていくこと、もう1つは日本発のスパブランドとして国内外の認知をはかることです。
先程少しお話したとおり、日本のスパ関連施設で使われている製品は海外資本のものがほとんどで、スパ文化自体がまだまだ根付いていません。世界に目を向けるとセラピストが国家資格になっていて、お医者さんと同格の扱いをされている国もあるくらい。一方、日本のセラピストは海外では非常に高い評価を受けているにも関わらず、国内での地位はあまり高くなく、好きだから続けているという方に支えられているのが現状です。わたしたち「スパセラピスト」は心と体を同時に整えていくことができる唯一の仕事だと思っているので、もっと地位向上に役立つことができればと考えています。
また、フランスならタラソテラピー、イギリスならアロマテラピー、タイならハーブボール(ハーブを詰めた布袋を温め、体に押し当てる施術)というように、その国特有のスパのメニューがあるんですが、まだ日本にはそれがありません。「日本と言えばこれだよね」というものをラピデムで作っていかなければいけないとは常々思っています。
――後者に関しては、現状どんなアイディアをお持ちですか?
日本人ならではの繊細さを生かし、施術以外の細かな点に配慮したおもてなしは一つキーになるかなと思っています。あとはすでに取り入れている東洋医学や日本古来の健康法…例えば、ツボの通り道を整える「経絡(けいらく)トリートメント」であったり、戦国武将が戦場で傷ついた体を癒やし、整体の礎になった古武術の「活法(かっぽう)」といった領域の知見をさらに深め、科学的見地と照らし合わせた上で、現代人にマッチするトリートメントとして作り変えていくことになるかなと考えています。
――ラピデムのトリートメントやプロダクトは、どのような方に利用していただきたいですか?
女性って、30代後半に差し掛かってくると昔みたいに無理がきかなくなったり、体や肌の変化を大きく感じるようになります。さらには結婚や出産といったライフステージの変化もありますよね。ちょっとしんどいなと思ったときはトリートメントを受けたりセルフケアをしていただいたりすることで、自分自身を見つめ直す時間を作っていただけたらなと思います。
――以前登場していただいた和ろうそく職人の櫨佳佑さんと、現代人には「あえてぼーっとする時間」が必要だというお話をしました。情報が氾濫している昨今、自らに問う時間は心の健康を保つ上でもとても大切だと感じます。
疲れとか痛みとかストレスとか、誰かに触ってもらって初めて気づくことって、すごくたくさんあると思うんですよね。ラピデムを利用することで、そういった気づきを得ていただけたらとても嬉しいです。
プロフィール
寺島雪江(てらしま・ゆきえ)
愛知県出身。ヴィセラジャパン、パンピューリジャパンなどを経て、2020年にセラピストとしてラピデムにジョイン。21年5月からはインストラクター業務に携わり、商品開発、トレーニングなど幅広い領域に従事。ライフワークはベリーダンス。